48号 シェアリング・エコノミー×ライフテック(LifeTech)=シェアリングシティ構想② ~『シェアリングシティ宣言』は、幸せをシェアする都市づくり~
2020年12月23日、日経新聞の朝刊一面に「ソニー、AIの倫理を審査 差別や乱用を回避」という見出しで、ソニーは2021年春にも人工知能(AI)を使う全ての製品について倫理面での安全性を審査する。不適切と判断された製品は基準に合うように改善したり開発を止めたりする」という記事が掲載されました。ソニーは製品がAIの倫理の基準に沿っているか品質管理の仕組みの中で審査します。
さて、私が勤務する富士通ではどうでしょうか?
このライフイノベーションコラム 8月15日(土)「29号エシカルテック~富士通グループのエシカルテック~」で紹介しています。ご覧ください。
内容としてはAI、人工知能の開発に当たって、AIそのものの倫理を考えます。人を中心に考え、人の意思決定を尊重・支援する、安心して使えるAIを目指します。また、富士通は地球環境を持続させるためにAIを活用し、SDGsの考え方でもあるサステナブル企業として社会貢献を目指します。
私はこの社会貢献活動は国や地方自治体を巻き込んで進めるべきだと考えています。AI やビッグデータなどを活用し、都市が抱える諸課題を解決する取組と同時に地域における活用可能な資産等の 有効活用を促すシェアリング・エコノミーとAIの活用を織り交ぜてスタートするのです。
今回はこの、シェアリング・エコノミー、幸せをシェアする都市づくりについて纏めてみました。
●世界を代表する3つのシェアリングシティ
【シェアリング・エコノミー】がグローバル化するのと同時に【シェアリングシティ】という街全体の経済効果と活性化を生み出す都市構想も世界各国に誕生し、都市の自治体が中心となり『シェアリングシティ宣言』をするようにまでなりました。
その中から海外での代表的な3つの都市を紹介します。
1つめは、オランダ【アムステルダム市】です。
アムステルダムは、まさに【シェアリング先進国】で、世界で初めて『Airbnb』の民泊サービスに適応する条例を作った都市としても有名ですが、既存のホテル産業とのあつれきを生むことなく規制を設け評価を受けています。
また、産官学に働き掛け「学校・教育」「企業家支援」「研究者支援」を目的とした研究所(ラボ)の創設などアムステルダムで生まれた【シェアリング・エコノミー】も数多くあります。
そしてもっとも特徴的なのは、【民間主導型のシェアリングシティ】ということです。
その役割を果たすのが非政府機関の『share NL』というソーシャルエンタープライズです。
ここは、アムステルダムだけではなくオランダ全体の【シェアリング・エコノミー】に関する情報を紹介し、マッチングする「オンラインプラットフォーム」を運営しています。
実は、私はこの『share NL』の創設メンバーのピーターバン・デ・グリンド氏と知り合いで、
日本でもこの【シェアリング・エコノミー】・【シェアリングシティ】を取り組めないかとミーティングも行いました。そして、私がこの提案をするのもピーターとの繋がりがあったからです。
2つ目は、韓国【ソウル市】です。
アムステルダムが民間主導というならソウルは、【政府主導型のシェアリングシティ】です。
ですから政府が積極的にWi-Fiなどのインフラ整備や【シェアリング・エコノミー】に取り組むスタートアップ企業への出資・支援を行っています。
ソウル政府は、元々「交通渋滞」「環境問題」「社会保障」などを解消することが目的でこの事業化を始め『シェアリングシティ宣言』しています。
3つ目は、アメリカ【サンフランシスコ市】です。
元々、世界へ拡がるソーシャルメディアを開発した企業も多かったことからサンフランシスコは、【企業と市民利用主導型のシェアリングシティ】です。
例えば、通勤バスをシェアするライドバスや「Uber」やサンフランシスコに本社があり
アメリカ、カナダの約300都市で運営する「Lyft(リフト)」などのオンデマンド配車サービスは、公共交通機関だけでは不便なエリアでは、今や一般的な市場となっています。
さて、この【シェアリングシティ宣言をする都市構想】は、日本でも数年前から動き出しています。そして今年、「千葉県千葉市」「兵庫県神戸市」「福岡県福岡市」「岩手県釜石市」「東京都渋谷区」などの自治体や民間企業、政府、シェアリング・エコノミー協会などの協力により『シェアリングシティ推進協議会』が設立されました。
それぞれの地域によって社会的課題や経済活性化など、その地域、その都市でしか出来ない問題解決を【シェアリング・エコノミー】により方法を見出すことが出来ると、私は確信しています。
●忘れてませんか?人類は地球をシェアしています。
そして人類は、もともと地球という資源・資産をお借りしシェアすることから、生活を始めました。つまり【シェアリングシティ】は、人類にとっては、『原点回帰』なのです。
この地球をお借りしてシェアさせて頂いてるという「感謝の心」を忘れなければ、
人類はもっともっと幸せに暮らせるはずです。
年内は、このコラムが最後となります。いろいろ変化にある年でしたが、何とか続けることが出来たのは、皆さんの応援のお蔭です。ありがとうございました。
来年は2021年1月9日から再開予定です。
良いお年をお迎えください。