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テック産業アナリスト-のと裕行のライフイノベーションコラム-22

6月27日(土) コラム22号 エネルギー(Energy)×テック(Technology)= エネルギーテック② 政府の新たな取り組みエネルギーミックス

2020年6月23日の毎日新聞の記事に『スパコン富岳が4部門で世界ランク1位 理研、21年度から本格稼働』と掲載されました。内容は、神戸にある理化学研究所の計算科学研究センターで整備を進めているスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」が、世界のスパコンランキングの4部門で1位になったことが紹介されていました。

4部門というのは、『演算速度』『実用時の性能』『ビッグデータを扱う性能』の3部門と、新設された『人工知能(AI)』を扱う部門でも首位を獲得し、世界初の快挙を成し遂げたからです。また、日本のスパコンが主要部門の演算速度で世界一になるのは、2011年11月に「富岳」の先代機「京(けい)」以来です。

 

 実は、このスパコンプロジェクトは、文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」計画のもと、理化学研究所と私が勤務する富士通が共同開発しています。私も6年前、「京」の利用者選定や利用支援をするRIST(一般財団法人 高度情報科学技術研究機構)に出向し、「富岳」にも関わっていましたので、今回の快挙を自分のことのように誇らしく感じています。

 

 そして、このスパコンの製造は、能登半島の根っ子の部分にある石川県かほく市の富士通ITプロダクツが担当しています。石川県で作られ関西へスパコンはやって来たのです。実は私の先祖代々のお墓も、同じかほく市の龍賢寺にあります。つまり能任家も石川県で生まれ関西で活動しています。勝手な解釈かもしれませんが、この流れに私は強くご縁を感じています。歴史的にも、江戸時代から明治初頭にかけて、日本の経済を動かしていたといわれる「北前船」は、大坂と能登を結び、当時は交流の盛んなエリアであったことも、私にとっては意味あるご縁だと信じています。

その「北前船」は、単に物資の流通だけでなく、当時の情報ネットワークとなり、各国の文化を伝え、時代の繁栄に貢献したそうです。それは「富岳」が新型コロナウイルスの研究に貢献しているのと同じだと考えてしまうのは、少し大袈裟な表現でしょうか。

 

 私は、富士通というグローバル企業に関わらせて頂き、日本一、世界一を身近に体験させて頂いたことは、まさしく当時の北前船の繁栄を表現する一航海で千両稼いだという「千石船」に乗らせて頂く様な仕事だと思っています。

 

 しかし、私たちは今、コロナ禍という荒波の中で新たな時代へ向かう船に乗っています。それは、けして安易な航海ではありません。とはいえ、天気を読み、目指す光ある場所、誰のために向かっているのかさえ間違わなければ、必ずたどり着ける航海だと信じています。そしてそれは、何よりも意味あるご縁のある場所でもあります。

 コラムで取り上げている日本という【エネルギー船】も、最新のテクノロジーを持ち、進む方向さえ間違わなければ今以上に安定し、世界を救うスターシップになる可能性を秘めています。だから他人任せではなく、舵をしっかりと取って行きたいですね・・・。

 

 

●第五次エネルギー基本計画とは

 

日本政府は将来へ向けた【エネルギー基本計画】を2018年、新たに定めました。長期的に安定した持続的・自律的なエネルギー供給により、日本の経済社会の更なる発展と国民生活の向上、世界の持続可能な発展への貢献を目指しています。それらを、より高度な【3E+S】、エネルギーミックスの実現と言われています。具体的に紹介すると。

3つの『E』、 

① 資源自給率の向上(Energy Security)・・・現在の9.6%から東日本大震災前を上回る25%を目指します 

② 経済性のある電力コスト(Economic Efficiency)・・・2013年度の電力の燃料費とFIT制度の買い取り費用等を足したコスト9.7兆円から2030年度には9.2兆円にコストを省エネします 

③ 温室効果ガス削減による環境への適合(Environment)・・・パリ協定の削減目標26%を2030年までに実現を目指します 

プラス『S』、安全性(Safety)を最優先として取り組みます。 

 

そして、更に 2050 年を見据え「第五次エネルギー基本計画」と題した4つの目標を定めました。

① 安全の革新を図ること 

② 資源自給率に加え、技術自給率とエネルギー選択の多様化を確保すること 

③ 「脱炭素化」への挑戦をすること 

④ コストの抑制に加えて日本の産業競争力の強化につなげる

ことが4つの目標になります。 

また、1 点集中ではなく、様々なエネルギーや将来の電源 (電気を作る方法)を組み合わせた供給構造の実現を「エネルギーミックス」と呼んでいます。

 

ちなみに第五次エネルギー計画の一から四までの流れは、

・第一次は、2003年10月「原子力発電を基幹電源として推進」を方針に閣議決定

・第二次は、2007年3月「原子力立国の実現」を掲げ閣議決定

・第三次は、2010年6月「原子力と再生エネルギーの比率を2030年に70%を目標」

・第四次は、2014年4月「原子力発電の安全性をテーマに」閣議決定したが、震災後にも関わらず、原案では安全性に於ける事業者責任を厳しく求めていた内容が削除されていた。これが日本のエネルギー問題のターニングポイントだったと考えています。

そして、第五次は「環境と安全性を重視」された見直しでしたが、パリ協定という世界と原子力発電のある地域の配慮に今尚、振り回されているように感じます。

●世界のエネルギー情勢は転換期を迎えています

 

次に政府が掲げる具体的な対策を4つ紹介します。

世界のエネルギー情勢は大きな転換期を迎えています。それを象徴するのが、 

・1つ目の「脱炭素化」です。 

人為的に排出される温室効果ガスを森林などの吸収源とのバランスを図る取り組みで、これに大きく影響するのが、化石燃料の使用量です。その対策として、「炭素」を料金として換算し、ペナルティとしての支払うのが世界のトレンドです。これを「カーボンプライシング税」といいます。日本では、「地球温暖化対策のための課税」として徴収されています。 例えばガソリン 1 リットル 150 円とすれば 10 円くらいがその税金になります。 

・2つ目は「省エネ」エネルギー消費には、4つの層があります。 

① 家庭 

② 運輸 

③ 業務 

④ 産業 

そして、更に全体として①から④を合わせた LED 化を加え、総合して約5030万klを削減する目標です。 

・3つ目は「再生可能エネルギー」日本では 2017 年時点で、16%が再生可能エネルギーです。 二酸化炭素の排出を考えても重要なエネルギー源ですが、まだまだ安全性、コスト、電線や送電システムの問題など時間が必要です。 

・4つ目は「原子力発電の見直し」電力供給の安定性やコスト、何よりも温室効果ガスが少ない点で政府は望んでいますが、地元の方の生活を考えると、私は素直に賛成は出来ません。 

 

以前、コラムでも紹介したピューリッツァー賞を受賞し、生物物理学者の「ジャレド・ダイアモンド」さんが、2012 年朝日新聞のインタビューで、日本に提言されていました。 

『温暖化の方が深刻、世界を思うなら原発を手放すな』と・・・。 

エネルギーと環境問題の溝は簡単に埋まるものではありません。次回は未来へ向けての新たなエネルギー開発をご紹介します。